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by 6_coloured_apple

バッハ「六声のリチェルカーレ」

 バッハ晩年の『音楽の捧げ物』という曲集に「六声のリチェルカーレ」という巨大なフーガが入っています。曲集を全曲聞き通すのは、なかなか疲れるのですが、このフーガ単独なら8分程度です。
 原曲は、楽器指定のない6段楽譜になっているようです。
 元々が鍵盤楽器での即興演奏のために、王から与えられた課題だったそうなので、バッハの時代を考慮してチェンバロで演奏されることが多いようですが、他にも色々な楽器による演奏があります。一時期、『音楽の捧げ物』と『フーガの技法』のいろいろな楽器による演奏を集めました。

 まずはオーソドックスな全曲演奏盤から。

1 Gustav Leonhardt (Cembalo)
 古楽演奏の大家。強弱のつけられないチェンバロで、表情を出すために、ルバートを多用する。レオンハルトの独特のスタイル(らしい)。そのスタイルに慣れてしまいさえすれば、いい演奏。

2 Nikolaus Harnoncourt (Cembalo)
 この人も古楽演奏の大家。ただ、テンポをさほど揺らさない。

3 Le Concert des Nations (Cembalo & Ensenble)
 輸入盤を購入したので、どういう団体かよくわからないのだが、面白いのは、チェンバロ独奏と、アンサンブルの両方が収められているところ。
 アンサンブルは独奏弦楽器と通奏低音にチェンバロ。弦楽六重奏で始まるが、すぐにチェンバロが絡む。チェンバロが入ってくると、とたんにバロックバロックしてしまうところが面白い。

 いろいろな楽器による編曲版

4 Tatiana Nikolayeva (Piano)
 『フーガの技法』全曲の余白に収められた演奏。「三声のリチェルカーレ」も収録されている。他にピアノで演奏されたものを知らないので、ピアノの音が聞きたくなったときはこれを選ぶ。ロマン主義の残滓みたいな言われ方をすることもあるようだし、正直『フーガの技法』は趣味に合わないのだが、これはオーソドックスな演奏で、とてもいい。

5 Marie-Claire Alain (Organ)
 すごく遅いのと、オルガンの古楽器を使っているとかで、ピッチが高く聞こえるので、はじめはすごく違和感がある。『フーガの技法』についても言えることだが、教会のオルガンの残響がありすぎて、線が見えにくくなってしまっている。残念ながら、あまり聞かない。

6 Karl Münchnger (Strings)
 弦楽オーケストラ版。ゆったりとしているが、重苦しい面も。

7 Basel Ensenble (Woodwinds)
 木管楽器によるアンサンブル。稀代の名手が集まって録音したもの。けれど、「だからなに?」という感じ。アンサンブルの妙味が活かされていないように思われる。これは、同じように「名人が集まりましたよ」という弦楽四重奏でも言えること。なんかバラバラというか、解け合わない。

8 Jean-François Paillard
 弦楽六重奏だというので購入したが、室内楽の自発的なアンサンブルではなく、指揮者の姿がちらちら見えてしまうので、好きになれなかった。

 ぜひ弦楽六重奏で聞いてみたいのだが、いまだに果たせていない。パイヤールは形式こそこの形だが、指揮者による制約が多すぎる。ウィーン・ゾリステン盤を注文に出しているのだが、2ヶ月してもまだ届かない。もしかしたら廃盤になってしまっているかもしれない。

 この曲には、とてつもない編曲版があります。新ウィーン楽派のアントン・ウェーベルンによるオーケストレーションです。これがすごい。ふつうフーガのような横の線を大切にする音楽をオーケストラで演奏する場合、一番上はバイオリンで云々というように、ラインごとに楽器を決めてしまうのですが、ウェーベルンは「音色旋律」という考え方の下、ひとつのフレーズを色々な楽器に分割して演奏させます。
 冒頭のフーガの主題すら、一つの楽器ではありません。弦楽パートも、全体で演奏したり、ピチカートになったり、ソロになったりと、音色がめまぐるしく変わります。
 全音から楽譜が出版されています。オーケストレーション譜の下にオリジナルの6段譜が付いていますので、どれほど音楽が解体→再構築されているかよくわかります。

1 Cristoph Poppen
 アルバムは「六声のリチェルカーレ」を両端に、2曲目と4曲目にウェーベルンの弦楽合奏(弦楽四重奏n編曲)、中央にバッハのカンタータを配すという非常に意図的な作品。その意図が成功したかどうかはともかく、この「六声のリチェルカーレ」は、とても良い。室内オーケストラという小編成であることも影響しているのかもしれないが、妙な強弱をつけない、ゆったりした良い演奏である。
 ブーレーズの新録(ベルリン)とともに、もっともよく聴いている演奏。

2 Pierre Boulez
 2種類あります。
 最初の演奏は、コロンビア(現ソニー・クラシカル)の『ウェーベルン全集』。オーケストラはたしかニューヨーク・フィルハーモニック。初めて聞いたのが、この演奏でした。目から鱗がぼろぼろぼろっと、たぶん三十枚くらいは落ちたのではないでしょうか(笑)。こんな編曲が、こんなやり方があったんだという思い。
 しかし、如何せんニューヨークはあまりうまくない。新録音のベルリンフィルは、さすがという感じである。

3 Claudio Abbado
 ウィーン・フィルの名人芸が絶品だというので聞いてみた。違う指揮者でウィーン・フィルだったらなあと思った。残念ながら、あまり聞かない。

4 小沢征爾
 だからなあに?という演奏でしかなかった。
 なんでこの人の評価が高いんだろう。私は、この人の演奏でいいと思ったものは、ひとつもないんだ。

5 Esa-Pekka Salonen
 テーマが出てくるたびに、ものすごくテンポを揺らす。たしかに、指定では「molt rubart」と書かれているのだが、これほど揺らされると、フーガに聞こえない。グールドも言っていたが、フーガでテンポをいじりすぎるのはやはりダメだ。
by 6_coloured_apple | 2005-04-22 02:21 | 音楽